ニッチユーザーの不定期日記

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アニメ昔語り(衝撃を受けたアニメ作品:「カウボーイビバップ」)

さて、今日は少し古いアニメの話をしよう。

古い、といっても自分の中ではそこまで古くないと思っていたのだが、最初に放映されたのが1998年、今から約20年前であることに、思わずため息が…。

自分が出会ったアニメの中で、未だ傑作として挙げるタイトルがある。

 

「カウボーイ・ビバップ

あらすじ

西暦2022年、月面にて短時間で宇宙空間を行き来できる「位相差空間ゲート」という技術の実験中、大事故が発生。月の一部が地球に落下、環境が激変し、人々が生活できないほどの死の星と化してしまう。惑星間の移民を余儀なくされた人類は、太陽系の惑星群を環境改善する「テラフォーミング」によって、地球を後にし、各惑星での植民が始まった。

時は流れ西暦2071年、地球の崩壊による無政府状態から脱した人類だったが、治安の悪化の一途を辿っていた。警察機構は手に余る犯罪を取り締まるため、指名手配犯に賞金を懸け、摘発を一般公募する制度を発布。カウボーイと呼ばれる賞金稼ぎたちが、凌ぎを削っていた。主人公のスパイク・スピーゲルと相棒のジェット・ブラックもそんな賞金稼ぎ。ジェットが古い漁船を改造して作った宇宙船「ビバップ号」に乗り、賞金首を追い求め、太陽系を駆け回る。

 

SFでありながら、開拓時代のアメリカのような混沌とした世界観。ジャズを中心としたアメリカンミュージックをBGMに全編に通してこれでもかと詰め込まれたクールな演出。大人が楽しめる極上のハードボイルドアニメである。

 

放映当時、学生だった自分は、OPの「Tank!」を観て、一気に引き込まれた。設定資料集やフィルムコミック、イラスト集、サウンドトラックを買い漁り、当時はまだ普通に流通していたLDを全巻、すべて自分のバイト代で初めて買ったアニメ作品であった。ちなみに、後に発売したDVD-BOX、そしてBlu-ray-BOXも購入し、今でも見返すことがある。

 

一見、宇宙を舞台にした近未来ストーリーかと思いきや、その中心は賞金稼ぎたちの生き様をメインとしたハードボイルド活劇で、進化したテクノロジーに反して都市部のダウンタウンや、場末の飲み屋、多種民族の文化の混合によって生まれた、ノスタルジックな街並みや生活スタイルは、SF作品らしからぬ作りである。ほぼ一話完結方式となっており、ハードボイルドだけではなく、ホラーや、コメディ、サスペンスといったバラエティに富んだエピソードが並ぶ。

 

主人公のスパイクは、かっこいい2枚目から、コミカルな3枚目までとにかく幅広い立ち回りができるキャラクターだ。ハードボイルドで渋く決めたかと思えば、ストーリーによってはちょっと間抜けでお調子者なギャグキャラになる。この魅力的なキャラクターは、担当している声優が山寺宏一氏の功績が大きい。様々な性格のキャラクターを演じてきた山寺氏だからこそ、絶妙なさじ加減の演技が一回りも二回りも魅力的なキャラクターになっている。

 

スパイクの相棒ジェットを始め、謎の女賞金稼ぎ・フェイ、天才ハッカー・エドなど、サブキャラたちも非常に魅力的だ。それぞれのキャラクターたちがメインとなるストーリーでは、普段、スパイクと交わしている軽妙なやり取りとは違った、暗い過去や、悲しい記憶など、色々な事情を抱えて今に至っていることがわかる。行きずりでなし崩しに集まった面々が、徐々に絆を深めていくストーリーは、終盤になってぐっとくる展開を見せることになる。

 

設定資料集には細かい設定が載っており、SFとしてのバックボーン、作り込みがしっかりしている。

短時間で長距離を移動する「ワープ」の一つの解釈である「位相差空間ゲート」や、「テラフォーミング技術」など、どのように成立し、人類に影響を与えたのか。

ストーリーには直接関わらないものの、しっかりとした世界観を描くため、様々な技術考証がされているところも面白い。

SF作品としての評価は非常に高く、2000年には、優秀なSF作品に授与される「星雲賞」の映画演劇、メディア部門に輝いている。

 

この作品にとってはなくてはならないのがBGMだ。ジャズをはじめ、ロック、ヘビーメタル、ラップやエスニックミュージック、ラップやボサノヴァまで、様々なジャンルの楽曲が物語を彩る。CMソングや、ドラマ、映画、アニメなど、様々なBGMを手掛けるトップクリエイター、菅野よう子氏によるサウンドは高い完成度を誇り、サウンドトラックはゴールドディスク大賞を受賞した。

 

クオリティも高く、後々評価はされたが、企画当初は周りの反応も鈍く、全26話として作られた本作だったが、当時、地上波では13話分の枠しか確保できなかった。「アニメのサウンドとして、ジャズなんてありえない」とレコード会社から言われ、1話を観た関係者から、「渋すぎて売れない」と、散々な言われようだったという。

 

ようやく地上波放映にこじつけるも、当時、青少年による殺傷事件が話題となっていた時期、そしてテレビ画面の激しい光の明滅から、児童がてんかん症状を引き起こしたいわゆる「ポケモンショック」により、テレビアニメに対する規制が厳しくなっていた。

そのため、暴力的な描写や、流血が激しい描写などはカットを余儀なくされ、演出において100%のクオリティが出せなかったのである。

結果、物語は完結をすることなく、最初のテレビ放映は終了。地上波の最終回は、ストーリーなど関係なく、全26話の中から選んだつぎはぎ映像と、キャラクターたちの独白によって、作品が規制によって未完成であることを暗に批判する内容で物議を醸した。ちなみにこの最終回は、地上波のみのオリジナル放映となっており、その後、パッケージ化されることはなかった。

 

後にWOWOWの無料放送枠にて、全26話が放映され、再評価されることとなった。最終的に、映像と関連CDではバンダイの看板であるガンダムシリーズに負けず劣らずの売り上げを残したという。

 

2001年には、劇場版アニメ「カウボーイビバップ-天国の扉-」が公開。こちらはテレビシリーズの続編という形ではなく、テレビアニメ版の時間軸では22話~23話の間にあったエピソードとして描かれている。

詳しくは観て欲しいので書かないが、アニメ最終回のその後を描くことは、演出上、不可能と言えるだろう。

 

ハードボイルドの演出が光るアニメとして、「ルパン三世」や、「シティーハンター」などが挙げられるが、この作品はそれらと一線を画す、革命的なアニメだったと言える。

SFとジャズをミックスさせ、音楽にこだわった斬新な企画と、ハリウッド映画的なハードボイルド演出は、それまでになかった挑戦的な作品だったため、上記のような不遇なスタートを切ることになったが、今をもって自分の中では、これを超える作品はなかなかないと断言できるほど、記憶に残るアニメだ。