ニッチユーザーの不定期日記

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栄光の落日を招いた武器は今(「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」を観に行く)

「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」の4DX版を観に行ってみた。

今年の7月9日に劇場公開されたが、たまたまタイミングを逃し、観れていなかったところ、近場で4DXが公開されていたという次第。

 

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ご存じ、スクウェアエニックスRPGの金字塔「ファイナルファンタジーシリーズ」の最新作、「FINAL FANTASY XV」のプロローグストーリーをフル3DCGで映像化したもので、ゲーム本編の世界観を先んじて味わえる内容となっている。

 

ところで、我々の世代で、「ファイナルファンタジー」で「CG映画」というと、色々思うところがある。

今から遡る事15年前。「ファイナルファンタジー」を冠した世界初フル3Dの映画が製作されていた。「ファイナルファンタジーシリーズ」の生みの親でもある坂口博信氏が監督を務める映画ということで、どのような出来になるのかと注目されていたが、蓋を開けてみると、ゲームのファイナルファンタジーシリーズの世界観からは想像もつかない、SF映画だったのである。

一応、「ファイナルファンタジー7」の世界観から着想を得た「ガイア理論」という設定が登場するが、正直、関連性があると言うには難しい話。

先行で公開された北米では完全に大コケ、ギネス級の大不振となる。日本でも支持は得られず、スクウェアは会社が傾くレベルの負債を抱えることとなった。

後に、人気RPGドラゴンクエストシリーズ」を製作するエニックスと合併することになるのだが、この映画による赤字も要因の一つと言われている。

 

さて、今回の映画については果たしてどうであろうか。

いくつかの批評サイトを観てみたが、賛否はあるものの好意的な評価も多かったように思う。

実際、自分が観に行ってみての感想としては、ゲームの導入、販促ということを抜きにしても、SF作品として出来はいいと思った。

まず、CG。かつての「ファイナルファンタジー」から15年経っているというところで、技術の革新のスピードに下を巻く。キャラクターの肉感や、服装、影の映り方、背景の光沢など、かなりリアルな作りになっている。

シナリオについては、尺の問題なのか、いくつか違和感のある話の展開(賛否が分かれるのはこの辺にあると思われるが)はあるが、プロローグという主旨ではあるが、一つの作品として完結している作りになっていて、悪くない印象。

声優について、主演の綾野剛氏に対する批判がチラホラ見られたのだが、自分はそこまで酷いとは思っていない。本人もインタビューで答えていたが、周りのベテラン勢がしっかりと世界観を作っているため、演技に迷いを感じさせなかった。また、FFシリーズの過去作もプレイしており、世界観についての理解度もあるというところは大きい。

そういう意味では、ヒロインの忽那汐里氏の方が、かなり違和感を感じた。こちらはどうにも世界観が把握しきれずに、フラフラした印象を受けた。

しかし、自分の中では映画料金分以上、かなり満足できた。

何より、繰り返しになるが、賛否はあるものの好意的意見も多い。興行的に観ても15年前(まぁ、あれはかなり底辺なのだが)とは、比べ物にならないほどの成功と言えるのではないだろうか。

 

皮肉なことに同じSF作品でありながら、15年前と今、何故ここまで差がついたのかといえば、やはり世界観の設定に尽きるような気がしている。

 

15年前の「ファイナルファンタジー」の公開時、直近で発売されていたのは「ファイナルファンタジー10」。その前の3作品、7、8と、9はややファンタジー要素が多めだが、近未来的であったり、スチームパンク寄りの世界設定続いていたというところで、SF方面へと舵を切ったのかとも思ったが、本来のファイナルファンタジー的要素があまり見られず、暴投してしまった気がしている。

 

今回の映画は、直近で発売されるゲームとの繋がりをしっかりと作っているというのが大きい。一本の映画ではあるが、ゲームの方の製作チームを中心として作られていて、世界観を把握しているスタッフのため、齟齬がなくダイレクトに作品が作れるのは重要だ。

 

また、近年のファイナルファンタジーの特徴として、日本でもトップレベルのCG技術で描かれる近未来的で、スタイリッシュなデザインが増えてきた。そういったイメージが浸透し、SF的ストーリーやデザインが受け入れやすい下地ができているというところもある気がする。

 

もし、15年前に作られた「ファイナルファンタジー」が、本来の世界観である魔法や、クリスタルの存在を中心に描かれる作品であったら、果たしてどうなっていたのだろうか。