物語の都合と割り切るには勿体ない(「君の名は。」を観てネタバレ考察)
話題になっている「君の名は。」を鑑賞。
公開情報が出た当時、自分はあまり注目していなかった作品でもあった。
別に新海作品が嫌い、というわけでもないが、緻密な背景によるリアルさと、その描写力で妙に自分の心を抉ってくる切ないエンディングのイメージがあるので、とりあえず、機会があったら観るかな、ぐらいの軽いものではあった。
ところが、公開直後から各所で注目され、リピーターも続出する盛況ぶりに誘われるように観てきたが、非常に清々しい気持ちになれる良作であった。
以下、ネタバレ
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作品の中で、個人的に気になった個所と、それに対する自分なりの解釈など。
瀧と三葉の間に、三年のズレがあったにも関わらず、何故、気付かなかったのか。
ましてや、日記をつける作業は日付を確認する作業ではないのか、という疑問が沸いてくる。
最初の入れ替わりから数回、二人は「これは夢だ」という感覚で、自分の体験を現実として受け入れていない。
しかし、何回かの入れ替わりのあと、互いが入れ替わっていることを現実と認識し、何とか周りと齟齬がないよう、取り繕う日常に追われていく。
そして、それに慣れてくると、自分ではない「キャラクター」を疑似体験する楽しさ、ロールプレイをしているような感覚になり、お互いがベストと思われるロールプレイをしようと試行錯誤を始める。
その中で、お互いの人間性を理解していくにつれ、気になる異性となってくる。そして、世界に恐らく二人しか共有していない秘密は、急速に惹かれあうようになるトリガーだ。
もう一つ重要な伏線は、互いに入れ替っている間のことは、目覚めると細部が不鮮明になる、と言及していることだ。
恐らくだが、劇中で二人は入れ替わっている事実を認識しつつ、夢の中で仮想現実に生きている感覚もどこかに残っていて、完全に現実として認識できていなかった可能性もある。この辺は、三葉の祖母、一葉が「夢を見ている」と指摘しているのが的を得ているのかもしれない。
もっと長い期間、この出来事が続いていれば、自分たちに起きている現象の謎の解明をはじめ、ズレに気付く可能性は高いが、そもそも入れ替わりが始まってから、三葉の死亡まで、劇中での季節の変化の描写が見られなかったため、ひと夏ぐらいの短期間ではと推測される。
そして、瀧は憧れの先輩から、「君は今、別の好きな人がいる」と指摘をされて、初めて三葉に対して「好きだ」という感覚に気づき、電話をするという行動に出る。
それまでは、互いの意識を共有する半身という認識であり、自分に対して電話をするという意識も生まれない。他人であるということに気づいた時に、終わりが来てしまったのではないだろうか。
新海作品には珍しい、リアルな日常を描きつつも、非現実的なファンタジー設定を中心に描かれる作品ということで、時間や意識といった色々な解釈も楽しい作品である。もう一度見てもいいかなと思いつつ、パッケージ化の情報も待ち遠しい。
余談だが、主題歌の「スパークル」は鑑賞後に即購入。聞いた直後に思わず買いたくなった主題歌は「サマーウォーズ」の「僕らの夏の夢」以来。
音楽も重要なファクターとして位置づけている新海作品らしく、作中のイメージが脳内プレイバックできる曲は素晴らしい。